【ライブハウス】「ライブハウス行ってとんでもない女に惚れた」
勃ったら書く
ちょっと待ったごめん勃ってないってかどうしよう誤変換
もういいや勃ってないけど書くわごめんな
自転車で二十分の場所にあった どっちかっていうと田舎寄りな地元だからライブハウスなんて滅多にない その一件のライブハウスだけがその辺りのバンドマンの聖地だったみたいで、だから逆に集まりはよかったんだろう こじんまりとした規模だったけど人は入ってた 幾つかのバンドが集まってライブをするのを対バン形式って言うんだけど よっぽど有名でない限りそういう形式が一般的で 友達の出番は二番目だった 俺は一番目の途中で中に入った
凄い音だけどただの雑音だった ギターもベースもドラムも一体感がなくて、ボーカルに至っては聞くだけでメロディラインを外してることが解りやすい 後々わかったけど最初のバンドってそういうもんみたいだな そのバンドが終わって、二番目のバンド 幼馴染がギターのバンドがライブを始めた これまたへっぽこバンドだった
だけど一組目よりはマシで、それに乗じて客のノリも良くなっていた気がする 友達のライブが終わって三組目 聞いてて違和感がないくらいになったちゃんとした音楽だった ジャンルはその日のイベントの傾向がそうなのか、激しいサウンドだ 三組目のバンドを聞いている途中に幼地味が客席に来て、俺を呼んだ 「ノリ悪いぞおい!」 ライブ終わったばかりでハイテンションのそいつは言うやいなや最前列に頭から突っ込んでいった 俺とは無関係な世界だと思った
三組目が終わって友達も戻ってきた 「次のバンドがやばいんだよ」 あーやばいんだやばいやばいって返したくなるのをぐっと堪えて 四組目のバンドが登場した 「やばい」 って思わず零した
この時点で惚れてたかって言われたら流石に違うと言い切れる ただ憧れたんだろう アーティストってかっこよく見えたりしないか?それと同じで こうなりたい、とは思わなかったけど ただただ感動していた ライブが終わって大トリのバンドが客を盛り上げる トリなだけあって凄まじい人気があるしボーカルもかっこいいし曲も上手い でも、俺は四組目のボーカルが忘れられないでいた ライブが終わった頃合で幼馴染が言った 「打ち上げあんだけどお前も残るか?」 放心状態で俺は頷いた
ライブが終わって客が帰ったり帰らんかったり 時間は七時頃だったかな ライブハウス的にはこれも商売みたいで、自由参加型の2000円徴収ジュース飲み放題とやらだ 打ち上げっても酒は出ないし(学生が多いイベントだったんだろう)お菓子がちらほらあるだけ でも客からすれば大好きなバンドマンと喋れるかもしれないしってんで人はまだそれなりにいた 俺は四組目のボーカルを思わず目で探した
バンドマン達は壁際のソファーに座って煙草吸ったりして盛り上がっていた やっぱそこには見えないラインがあるんだよな 客も気軽には近づけないみたいだ 金髪のボーカルはそこにはいなかった 帰ったのかなって思うと一気に熱が冷めてきて、俺も帰ろうかとしたら 幼馴染が「こっちこいよー!」って俺を呼んだ 呼ばれて「こいつ幼馴染なんだぜwww」って周りに紹介される 「幼馴染!すげえ!」なにが凄いんだか 「鉄板だなwww」そんな鉄板は嫌だ まあ幼馴染っていたりいなかったりするよな そのくせドラマでもなんでも鉄板な間柄だよな ネタ要員として呼ばれただけだった
ほうほう
明るかったステージは暗くなっていた その代わりにライブハウス全体がオレンジの柔らかい光で照らされていた ライブをしていた時と真逆な印象に寂しくなったけど ぼうっと眺めていたら金髪のボーカルが浮かぶようだった それだけ強烈で、印象的で、脳裏に強く刻まれていた どれぐらいそうしていたのか 「なにしてんの?」と声をかけられた 聞かれて、なにしてんだろうなーと解らなかったから 「なにしてんだろ」って鼻で笑った 振り返ると、金髪のボーカルがいた
「だよな」 会話は続かない 俺はあれだ、コミュ力が低い 少なくとも会話が上手な方じゃない 向こうは多分、会話をしないタイプだ するときだけする、みたいな それは印象に過ぎなくて、仲良くなれば普通に会話もするんだろうけど 「じゃあ行くか」 とこれが物語ならそう続くんだろうけど、いかんせんただのリアルなので 金髪の彼女が俺の手を引いてライブハウスを出てデートになり・・・的なことはなかったです どれぐらいの間か彼女は隣にいたままで、暫くしてどこかに行った 俺はそれが堪らなく悲しかった、かな?わからん
打ち上げは途中で抜けて家に帰った 自室のベッドに倒れこむように沈んでも彼女を鮮明に覚えていた 綺麗な金髪はさらさらと流れていた 目は大きめで、はっきりとしていた だけどどこか虚ろな、なんだろう、淋しげな感じを思わせた 顔は全体的に小さくて、口もちょこんとしていた そんな全てが忘れられないまま、翌日 学校に行った俺は別のクラスにいる幼馴染のところへ直行した
「おー、昨日は途中で帰ったんだな」 言われて、まあねと答えたら「お前はああいうとこ苦手だもんなー」と豪快に笑った こういうところが楽だ、幼馴染ってのは 自分のことを解ってくれているから押しつけすぎもしないし、気楽でいい 「楽しめたか?」 「うん、ありがとう」 「俺らのバンドは?」 「微妙すぎ」 「やっぱりwww」 ほんと、気楽でいい
「で、どしたん?」 用事があったから訪ねた それはもちろん金髪の彼女のことだった しかし俺は聞くのが億劫だった 幼馴染は気の置けない仲ってやつなんだけど、そんなこいつにでさえ女関係の話なんてしたことがない それに、音楽やってんのに気になる人ができましたって、なんか幼馴染を侮辱してる気がした 「あの、さ」 言いたくて喉まで来てるのに言葉にできない 「なんだよwwwお前まさか気になる子でもいたんかよwww」 俺の中で幼馴染が神格化された時だった こういうのって雰囲気でわかるもんなんかな?
あ、いっこ言い忘れ 夏休みの登校日だったんさ そんだけ
えっさらほいさと自転車で二十分 住宅街、大通り、田んぼ道、学校の横、公園の横なんかを通って辿り着くライブハウス 幼馴染とは現地集合だったのでメールを送ると 『もう少しでつくわー』とのこと ふと気になって店外の小さな黒板に目をやった 本日のセットリストにイベント名が書かれていた [発狂寸前サタデーナイツ!] ・・・どうなんだそれは イベント名で解る通り、この日のイベントは夜だった 夕方の七時から始まるライブ 両親には幼馴染の家に泊まると言ってある
到着した幼馴染を見てちょっとだけ驚いた 茶髪になっている 「染めたんだよ、似合うだろ?」 「ファービーみたい」 「まじで!? 鳥!?」 そんな軽口を叩いてライブハウスに入っていく 前は一組目の途中だったけど今回は始まる前 嵐の前の静けさに似た、独特な高揚感と静寂が空気を埋めていた、気がする なんかそれっぽいの想像してくれたらいいや 「ネクロスティックは今回も四番目だな」 約二時間後だ 先は長い
今回は一組目から三組目までを省略 特に目を見張るものはなかった 強いて言うなら幼馴染が三組目で最前列へ特攻してもみくちゃになり、帰ってきたら額から血を流していたことぐらいか 「最前は楽しいぜぇ〜!」 マゾだ 休憩時間を終えて四組目が登場する 女の黄色い声援が響いた 金髪のボーカルもまた、あの雰囲気を纏って現れた マイクスタンドを調節して、持ってきたペットボトルを傾けて飲む 胸が高鳴っていた
ノっているっていうのとは違う気がした 最前で騒ぐわけでもなく、壁際にいる足でリズムを取るでもなく、ただただ茫然と立ち尽くしていた その世界観にひたすら酔っていたのかもしれない なんにせよ、ずっと楽しみにしていたものだった 「前行かねえのかよ!」 耳元で幼馴染が叫んだ 前に行く必要はなかった このままでも充分に楽しめるから、心地いいから それに俺はマゾじゃない 頭から血をだしてにやにやしていられるとは思えない それでも前に行きたくて、足が一歩進みだす 「行くぞ!」 幼馴染がいつものように特攻する どうするべきかわからず、続いて俺も特攻した
前は後ろと違って無法地帯と言って差し支えなかった 全員が激しく揺れ動いているからか全体のうねりが激しい 足を踏ん張ってないと横から押し寄せる力に弾かれてしまう それでも必死に留まり続けて、前へ前へと進んでいけば 少しだけボーカルとの距離が近くなる もっと間近で見たいと願うようになる 曲が最も盛り上がるところで全員が拳を突き上げる 何度も何度も天を突く様子はさながら宗教じみている だけどその一体感がはたまた気持いいもので 俺も同じように突き上げた
まあ、ここまでは普通にライブのお話、なんだけど イベント名を思い出してほしい、発狂寸前である そしてバンド名はネクロスティックで、前のライブ同様重低音の激しいサウンドだ これは後に知ったジャンル名だが、ハードコアだった ハードコアのライブに行ったことが無い人は多いと思う はっきり言うと、危ない 本当に危ない 無法地帯なんてもんじゃない その曲は前にやらなかった曲だろう 前は学生が多かったから でも今日は違う 曲が始まるやいなや、暴動が起こった 暴動、ってとはちょっと違うか 要は、客同士での殴り合いが始まった
さてさて 笑おうがなんだろうが俺の人格を思い出してほしい 幼馴染のようなテンション高い目立つ系ではないということ それってつまり、文化系だ 筋肉もなければ喧嘩の経験もない そんな俺がそんな場所で笑いながら人に殴りかかろうとしたらどうなる? 殴れない、そして殴られる それでも俺は向かっていった せめて噛みついてやろうと思った ということは顔面から身を乗り出して行った バチって頭ん中で電気が弾けた 同時に視界が真っ暗になって、俺の意識はそこで途切れた
目を覚ますとライブハウスじゃなかった 病院だった、ってわけでもない 白い蛍光灯がテラス、ソファーとテーブルが置かれた場所 整ってるわけでもなくて、かといって乱雑でもない、適当な場所 楽器が沢山置いてあった 机の上には煙草と酒とジュースとお菓子 頭がぼうっとしていた 起き上がろうとしたらハンマーで殴られたみたいに頭痛がした うめき声でも出てたんだろう 「大丈夫?」 全く心配してないと声の調子にも態度にも現れて聞いてくれたのは、俺が寝転がった頭の先に座っていた人 金髪のボーカルだった
後退るってのはこの場合間違いだけど、逃げようとしたら身体が動かなくてまた呻いた 「動くな動くな。ほら、酒でも飲むか?」 ・・・なんで、酒?と思わずにはいられない 「酒飲んだら痛みは引くんじゃない?」 ものっすごい適当な声色だった 私も知らないけど、と続きそうな感じ 小さく首を横に振った 前と違って動揺はしていない 意識がまだ安定してないから 「無理しないほうがいいよ」 心配してくれてるのかと思ったけど 「弱いのに前でたら、危ないから」 寧ろ鬱陶しそうな風だったので、俺は歯がゆかった 自分の弱さを情けないと感じたのは、これが初めてのことだった
まあ、こまかいこたぁいいよおれは。楽しもうぜ、彼の話を。
俺からした彼女っていうのは 歌っている時のかっこいい様相と 前に話しかけられた時のつまらなさそうな雰囲気だけ だから今回の、嬉しそうにはにかむ表情は意外で 見惚れた 「そっか、かっこいいか。ははっ」 変な人 でもこういう格好をしてああいう歌を歌ってれば、かっこいいと言われることが嬉しいんだろうか 「はい、かっこいいです」 もっと喜ばせたくて、もう一度言った 「もういいって、照れるって」 と顔を逸したこの人を、ある意味で初めて女性だと認識した たぶん、可愛いって思ったから
「大丈夫か!」 いきなり中に入ってきたのは幼馴染だった その頃にはもう楽屋だって知っていた もちろんその楽屋には俺と金髪ボーカル意外にも、疎らに人はいたよ あまり多くもなかったけど 手を挙げて大丈夫だと合図すると、幼馴染はすっ飛んできた 「お、お前!」の続きは耳元で囁くように「どうやって秋さんと仲良くなったんだよ!」と続いた 秋さんと言われてボケーっとしてたけど、金髪ボーカルさんの名前なんだろうと気づく 「仲良くなってないよ」 普通に答えた 「でも隣にいんだろ!」 その囁きは金髪ボーカル、秋さんにも聞こえたようで訝しむように幼馴染を睨んだ 「なに?」
「いや、俺は・・・」 「やったらいいのに、もったいない」 「もったいない、ですか?」 「そーそー。弱いくせに前出て暴れられんなら客やってるよりバンドやってたほうが楽しいし危なくないじゃん?」 凄い合理的だと思った 「私もなんだかんだで女だからね、最前で暴れられるほど強くもないし」 「暴れてそうですけどね」 「そりゃあんたよかマシだろうけどさ」 女性に負ける俺 まあ負けるだろうけどね
読みやすい 秋さんはいくつ?
「好きかは・・・わからないよ」 「考えてみりゃお前がハードコアに嵌るってのもおかしいしな。松任谷由実とかあのよくわからん、欝な曲しか聞かんお前が」 「松任谷由実は凄い歌うまいし、欝だけど倉橋ヨエコはいい曲ばっかだよ」 「まあそのへんは本気で趣味が合わねえからいい。いやだからおかしいんだろ」 「気になってんだろ?」と幼馴染 答えられなかった 図星だったから 「よし、じゃあ決まりな。頑張れよ」 「・・・なにを?」 「・・・普通に会話を?」 幼馴染のアドバイスは実に適確だと思ったよ
ライブが終わって、前と同じ打ち上げ いや前とは色々と違う 例えば酒は解禁されてるし、客全員がと言っても過言ではないくらい煙草を吸っていて煙たい そして、隣に秋さんが座っている 秋さんが座っている! 会話はない 幼馴染のアドバイス通り、普通に会話を試みたかった でも内容が浮かばない 秋さんが机の上の煙草に手を伸ばす 「煙草、吸うんですね」 「うん。あんたは吸わないの?」 「十五才ですから」 「うん、それで?」 つくづく別世界な人だ
「あ、なるほど。そうか、真面目君か」 「・・・普通です」 「ごめんごめん、こんな場で慣れるとね。そういう感覚どっか行っちゃうんだよ」 殴り合いが普通の場所にいたらそうだろうなーと納得 「じゃあ煙草も酒もやらないんだ」 「そうですね」 「興味もないんだ」 「煙草は全く」 「ほう、酒には興味あるんだね。おーい」 秋さんが手を挙げて大胆なことを言う 「置いてある酒の種類全部持ってきてー」 「全部!?」 あれだ、鳩が豆鉄砲食らったような、ってやつ 俺は鳩になって豆鉄砲食らったんだよ
会話の内容を全て覚えてるわけじゃないけど、俺にしてはに話せた気がする 俺の隣には幼馴染もいて、ちょくちょく混ざってくれたりもした 基本的に反対側の人と話していたけど、気にかけてくれていたみたいだ 多分、それも心強かった たくさん話して、梅酒もそれなりに飲んで、時間も経って トイレに行こうとして立ち上がった時だ 立ち上がった瞬間に膝から崩れた 「あれ?」 足に力が入らない それでも無理矢理立とうとすると産まれたての子ヤギ状態で、震えていた 「酔ったの?」 秋さんが聞いてくる 意識ははっきりしていた
「あの」 聞くと秋さんはまだ不機嫌なようで、煙草に火をつけた 「無理なようなら」俺の言葉に重ねて「大丈夫だって」と、もう決定事項のようだった 「・・・彼氏さんとか、ですか?」 「あいつはそんなんじゃない」 とはっきり言い放った 俺が賢いかバカなのかはさておいて、考えたのはこう 秋さんと仲のいい男性がいて、だけど秋さんはその人を彼氏だと思ってない だけどギタリストさんからすればなにかしらの関係があるから、問題になるぞってこと それが俺は悲しかったけど、秋さんに恋人がいないことを知って嬉しくなった でも、素直に喜べなくて、もどかしくて、俯いた
秋さんの家にはタクシーに乗った お金を払おうとしたら「元々乗って帰るつもりだったから」と拒否された こんな短い間なのにわかるのは、秋さんはこうと決めたら譲らない人だってこと 俺は渋々財布を締まった 秋さんの家はマンションの一室だった 狭いけど、と言っていたけど寧ろ広く感じられた 部屋は1ルームで14畳 一般的な部屋って六畳とか八畳だから二部屋を一部屋にぶち抜いたような造りだ ベッドがあって、ギターがあって、テレビがあって、パソコンがあって、本棚がある、シンプルな家 あと、パソコンの近くに置かれた大きなスピーカーが印象的
「シャワー浴びてくるから適当にしてて。パソコン触れるならネットぐらいしててもいいし、本はなに読んでもいいから・・・物色するなよ?」 「しません、絶対に」 最後だけやけに力強かったので息を呑んだ シャワーの音が扉一枚向こうから聞こえてくる ざーと流れる音の中で、俺は秋さんの裸を想像してしまった 普通するよな? それに、なにより、なにより・・・一つのことに気がついてしまって、物色するなと言われていたけど、俺は目に付いたクローゼットをあけた そこには服しかなかった ・・・ベッドがひとつしかない 布団もない どうやって寝るつもりなんだろう
出されたコーヒーは螺旋がミルクで描かれていた 「おお、おしゃれですね」 「だろ?得意技の一つなんだ」 と無邪気に言う秋さんが可愛らしいものだから拍手をした 「馬鹿にしてんな?」 すいません、と謝った コーヒーは飲みやすくて、酒の溜まった身体に心地よかった 秋さんは漫画を読んでいた 俺は緊張していて、手が震えていたかもしれない どうにも座りづらくって、何度も尻を動かした 「なにやってんの?」と冷めた視線を投げられて いや、なんでも、と返すばかり 暫くして、秋さんが「寝るか」と言った 無言で頷いて、俺は事の成り行きを見守るだけだった
「悪いけど寝床は一つしかないんだわ」 秋さんはベッドに向かい、布団を綺麗にする 意外に几帳面なのかもしれない、部屋も小奇麗だし 俺はぼうっとそれを眺めていて、布団を足にかけた秋さんに、隣をぽんぽんと叩かれて 「おいでよ」と言われるまで動けなかった 逆に言うと、操り人形のように立ち上がって、俺は秋さんの隣に潜り込んだ 「失礼します」 そんな言葉を挟んで 「堅苦しいね」ころころと笑う 遊ばれてるのかな、とまた思った 秋さんがリモコンで部屋の電気を落として、一つのベッドに二人で並ぶ 息がろくにできていない そんな気がした
これは、どうなんだろう 俗に言う誘ってるってやつなんだろうか、と都合のいいことを考えた 仮にこれで手を出したら俺は嫌われてしまうんじゃないだろうか はたまた軽蔑されてしまうんじゃないだろうか そんな考えが童貞故に勝って、自分から手を出すことはできないでいた 手を強く握り締めて、汗をかいていた 扇風機が回る音がやけに響いて、何度も耳の中で反響する 秋さんの息遣いも聞こえる 寝たのだろうか 俺は眠れるのかな 眠れそうもない 朝までこのまま、棒立ちでいるのかな 「ねえ」 心臓が口から飛び出るかと思った
「は、い」 なんとか二文字が口から出た 「二週間後に、またライブがあるんだよ」 「はい」 「おいでよ」 答えはもう決まっている 行くに決まっている 喜び勇んで飛んでいく 仮に俺が秋さんに弄ばれているだけだとしても それでもピエロになって参戦する 男なら、きっと誰だってそうだ 二回しか会ってない男を家に連れ込んで、ベッドまで一緒なのはなんでですか? 俺がこの時一番聞きたかったのはそれだけだった
秋さんを知れば知るほど遠く感じる 一生かかっても追いつけない気がしてしまう 普通に暮らした俺とは別の意識で生きてるんだと思ってしまう それが苦しい 俺は一瞬でも夢を見た 秋さんと同じベッドで眠ってしまっていたから こんな夜が日常になればいいって、願っていた でも秋さんからすればなんてことないことなんだろう 俺とは違う意識を持っているから そう考えて、俺ははっきりと気づいた 近づけなくて辛いこと 秋さんのことが、好きだということ 「コーヒー、美味しいです」 「そりゃよかった」 無理矢理振り絞った声は、きっと震えていなかった
秋さんはバイトに行く服装へ着替えた ライブの時とは違って若干おとなしめな、だけど秋さんらしい格好だった 「なんの仕事ですか?」 「・・・じょう」 「え?」 「工場!」 「あ、はい」 なぜか秋さんは恥ずかしがっていた 今になればわかるけど、秋さんのイメージのなかで工場で働いてるってのが許せなかったんだろうな 因みに平日は日勤だそうだ 土日は休みだったり夕方だけだったりするらしい 「じゃ、また二週間後ね」 「絶対行きます」 「ん」 そして二週間後、とはいかなかった この辺りからスレタイの、とんでもない女に惚れた、の理由が浮き彫りになる
それが訪れたのは始業式も終えて、昼前になった辺りだ 三時間目を終えて、さあ帰ろうか、幼地味を誘って遊ぼうかと考えていた頃合だ 下駄箱で靴を履き替えているとやけに騒々しかった 何事だろうと思って出入り口付近に首を伸ばすと いかにもな不良が五人、立ち並んでいた そいつらが 「○○ってのはどこだ!」 と、俺の名前を呼んでいたものだからどうしようもない 冗談じゃない 本気で俺は恐くて歯を打ち鳴らした
冷や汗がでる 身体が強ばる 足も震えて泣きそうになる なにをしてしまったんだろうと考えて・・・思い当たる ライブの打ち上げの、ギタリストの言葉が蘇る こういうことだったのか 気づいてしまってももう遅い どうにもならないことってある 例えば そこにいたクラスメイトが一人胸ぐらを捕まえられていて あいつです、って怯えながら俺を指差したこと、とか
口の中は切れていた 身体の至るところが痛かった 立とうとしても立てなくて、ただその場に寝そべった 全校生徒の大半が見ていたかもしれない 警察に連れて行かれる不良達を見て 俺と幼馴染は喧嘩で負けたけど なにも負けた気がしなかった だから、笑えた 笑うと口の端が痛くって、しかめっ面になったけど 楽しくって笑った 結局、俺と幼馴染も警察に連れて行かれたんだけどね
翌日、俺は学校を休んだ 殴られすぎたせいで熱を出していた 幼馴染に電話をすると、幼馴染も休んでいた 「あれって秋さんの関係だよな」と幼馴染は言った まだ終わっていないから、今後どうするかというのは大切な話だ 「多分」 「お前、秋さん関係以外でも殴られるようなことしたのか?」 「そもそも殴られるようなことしてないけど・・・してない」 「じゃあ確定だな。どうすっかな、これから」 「うん・・・幼馴染はなにかしらない?」 「だから俺は知らないって。あ、いや、聞いてみるわ。仲のいいバンドがいるから」 「ありがと、お願い」 一時間後に幼馴染からまた連絡がきた
「お前さ、秋さんのこと好きか?」 俺が唸っていると幼馴染が聞いてきた 「うん」 平然と答えた もうあの日に答えは出たから ただ、その距離が果てしなく遠いだけで 「じゃあ決まりだな」 「決まり?」 「今まで通り、頑張れ。俺が応援するからよ」 「うん」 こんなにも心強い言葉はない 応援すると言ってくれて、実際に応援してくれて、一緒に立ち向かってくれる 「じゃあとりあえずは・・・今週末のライブだな」 「だね」 こうして、始業式の一件は終わった でも、これは始まっただけだ
人気は格段だった 曲も上手で耳障りなんかじゃない 言ってみればハードコアは激しすぎるから、聴く人によってはどう聴いたって耳障りなんだろうけど、上手いとそうでもない でもまあ、それどころじゃない そんな音楽的価値観なんてフィルターを通さない あのイケメンのボーカルが不良を差し向けたのかもしれないなら、俺はあいつに怒りしか浮かばない そうだ、怒りだ 怒るっていうのはこういうことを言うんだ 段々と苛立ちが込み上げてきた あいつは、秋さんを苦しめているかもしれないんだ
「打ち上げ、参加してもいいですか?」 俺の方から聞いた これも前から決めていたことだ セットリストは事前に知っていた、というか幼馴染が教えてくれた 本当にあのイケメンボーカルが・・・面倒だからイボでいいや イボが不良のボスなのかわからない それを知らなきゃいけないし、そうでなくても、秋さんを困らせるような奴なら、なんとかしたい 秋さんは少し渋っていた そのことが関係しているのかな、と思った 「間違えた。打ち上げ、参加します」 と言うと、 「なんか変わったね」 と言われた そうですか?と聞くと どうだろうね、と言われた ほんと、どうだろうね
前と同じように楽しめる打ち上げ、とはいかなかった 俺は秋さんの隣にいて、秋さんと喋っていた 仕事しんどくないですか? とか、欲しいものとかあるんですか?とか それには猫を飼いたいと答えていた 「俺が猫になります!」と言ったのはもちろん幼馴染ね 「あんたは猫ってより狂犬だ」と言われて「保健所行ってきます」としょんぼりしてたけど 笑い話だ、ここまでは ちらちらと様子を窺っていた イボは取り巻きのファンの女の子に囲まれていて、いかにもイケメンボーカル略してイボの役割を真っ当しているようだった そいつは立ち上がって、こっちにきた イボがこっちに来た
「あれは・・・」 秋さんにとって言いづらいことでも、あれだけは聞かなくちゃいけない だって、あの会話は酷く不安になる 重い時間が過ぎて、秋さんが口を開く 「私は当時馬鹿だったんだ。今でも馬鹿だけど、比べ物にならない。それで・・・」 秋さんは口篭る ただ、なんとなく見えてしまったから、もうなにも聞きたくなかった それでも秋さんは続けた 聞いたのは俺だ 最悪だ、と自分を非難する間もなく 「そういう写真撮られてて、脅されてんだ。ネットに流すぞ、って」 俯いて、噛み締めて、握り締めて、掌から血が滲み、秋さんは言った 俺は立ち上がる
「どうするつもり?」 「やめさせます」 「どうやって?」 「土下座してでもです」 「私に近づくなって言ったら?」 「その時は・・・そうするしかないでしょう!?」 秋さんもゆっくりと立ち上がって俺の正面につく 「あーんして」 「は、あーん?」 「いいから」 言われた通りに口を開く 「んって口閉じて」 言われた通りに口を閉じて、頬を思い切りひっぱたかれた 「ふざけんなよ」 と、それはそれで、なんとも秋さんらしい口調だった
「これは私の問題だ! あんたが気に病むことじゃない!」 「気にしますよ! 秋さんの・・・写真、ばらまかれるんでしょう!?」 「いいんだよ、もう」 「いいわけない!」 「じゃああんたは私から離れるのか?」 「はい」 言って、秋さんは俯く 一秒、二秒と流れていく 少しして上げた顔には、瞳には、涙が溜まっていた 「私の気持ちは無視かよ!」 それは、秋さんにとって精一杯かもしれない、告白だった なにせ、それ以上なにも言わなくなってしまったから
こんだけ上手いと、フィクションでもノンフィクションでも関係ないや。 面白い。 純粋に続きが気になるっ!
「あの」 なにも言えない 気の利いた言葉が言えない こんな時、世のイケメン男子はどうしてんだろう 映画の台詞を思い出そうにも、混乱した頭はまともに働かない 「えっと」 手の中でぐすぐすと泣き続ける秋さん 二個年上で、金髪で、ピアスをしていて、自活していて、感情的な彼女を 「俺は、秋さんとずっと一緒にいたいです。その、好きだから」 一拍置いて、大好きです、ともう一度言った すると、秋さんは泣き止んでくれなかったけど、少しだけ息を整えて 「ばか」と零した
トイレから戻ってきた秋さんは俺の真横に座った えって挙動不審になっていると 「なに?」 と睨んでくる なにこれ可愛い、とか思うよな 思ったよ 「それで、イボのことなんですけど」 「あー、だからもういいって。仕方ない」 「なんかさっきと全然違いますね」 「そりゃ吹っ切れたし、それに・・・」 秋さんは首をくて、くてと横に振った 「あんたがいてくれんでしょ?」 照れもなく言ってくる秋さんに、イケメンだと思わずにいられなかった
「そりゃ私だって嫌だったけどさ、元々諦め半分だったんだよ」 「諦め?」 「そうそう。撮らせた私が悪いんだし、それに、二三年もしたら落ち着くかなって」 「はあ」 「でも、あんたがいてくれるならいいや、どうでも」 それは俺にとっての幼馴染のようなものなんだろうか 俺が秋さんの幼馴染になってあげられるんだろうか いや、なるんだ 「頑張ります」 「なにをだよ」 そうして、秋さんは朗らかに笑った ころころと表情の変わる、素直な秋さんに どうしようもなく惚れている
少しして、ベッドに潜り込む 「ん」 二人並んだ時に、秋さんが器用に頭だけを上げた 「どうしました?」 聞くと大きな溜息を漏らされて 「ったく。腕」 「どうぞ」 俺が出した腕を秋さんは枕にして、横になった 「物分りの悪い」 「ガ、ガキなんで」 「だったらさっさと大人になって」 「頑張ります」と言おうとしたのに被せて、秋さんは言った 「いいや、やっぱ。そのまんまで」 そのまんまがいいや、と 秋さんは眠っていった 俺も暫く秋さんの頭を撫でて、その手を置いたまま、眠った 睡眠にも質があるって思い知った こんなにも心地のいい眠りはなかったから
さて、このまま話が終わってもいい頃合だ 俺は秋さんと付き合うことになって、それを幼馴染に報告して、凄い喜ばれて 秋さんのライブ見に行ったり、万が一にも俺がバンドを組むってことはないけど でも、そんな未来が あったかもしれない でもなかった これだけ言っておくと、この話は悲しい話じゃない 一つも悲しい話じゃない 何度でもいう ハッピーエンドだ だからもう少しだけ続く まだ終われなかった 終わらなかった 終わればいいのに、終わらなかった それほど、イボの心は、歪んでいた
秋さんの家に泊まってから一週間が経っていた 連絡先も交換した、けど、メールはこなかった 秋さんってそういう人だ 幼馴染には両手を挙げて喜ばれた 流石に秋さんの秘密はなにも言えなかったけど、でも、喜んでくれた 「イボの野郎、次になにかしてきたらぶっ殺してやるぜ」 と物騒なことを言っていたけど、平和なものだった 平和だと思っていた 俺はあの最低な野郎をナめていた 翌日、幼馴染は学校に登校してこなかった どうしたんだろうと思っていると、俺の家に電話が入っていた 幼馴染の親からだった
家に帰って「ただいま」と言うと母親が慌てて駆けてきた 「落ち着いて聞きなさいよ!」と言う母親 ほんとにこんなシーンってあるんだな 落ち着くのはそっちだ でも、確かに落ち着いてられなかった 「幼馴染くんが・・・救急車で・・・!」 忘れていた恐怖が背筋を泡立たせた そう、終わってなかったんだ
ドキドキしてきた
幼馴染の母親は秋さんを問い詰めた どうして? なんで? と だけど俺が間に入った 秋さんのせいじゃないんです、と 実際違った だけど秋さんは泣きながら謝り続けた もしかしたら、今までずっとこんな気持ちだったのかもしれない ずっと、ずっと、謝り続けてきたのかもしれない 友達も、寄ってくる男も全てを壊されて 心の中でずっと罪悪感を募らせてきたのかもしれない 吐き出すように謝り続ける秋さんと この人が悪いんじゃないと言い続ける俺を見て 幼馴染のお母さんは、違うのね、と言って壁の椅子に座った
「よっ」 目的のコンビニに着くと秋さんはいた 今日は学校を休むと言っていたので、違和感はなかった 「お菓子とか好きに買っていいよ」 「じゃあ遠慮なく」 「遠慮はして」 「はい」 普通通りだ ずっとこんな日々が続けばよかったのに ジュースとお菓子を買って、秋さんの家に行く 少しだけ見慣れた家に入って落ち着いた 「さて、と。頑張るか」 「なにをです?」 「飯、作る」 それはちょっとカタコトな、機械じみた言い方だった 「秋さんの手料理ですか! 楽しみです!」 「やめて、料理、苦手」 だからカタコトなのかと思った
終わりが予想できない
テレビがあるけど、テレビは点けていない 点けないんですか?と聞くと、見たいのあったら見ていいよ、とのこと 見ない人なんだろう パソコンから曲を流しているんだろう、穏やかな音はスピーカーに乗って耳に届く 「こういう曲も聞くんですね」 「年中ハードコア聞いてたら気が狂うって」 「確かに」 「これ、なんて曲ですか?」 「・・・さあ?」 とても秋さんらしい反応だった ご飯を食べ終えて、食器を片付けるのを手伝った 「客だからいいよ」と言ってきたけど 「将来手伝うから練習です」とちゃけてみたら 「どうだろね」と返ってきた シビアな目線をもってらっしゃる
関節キスなんてどうでもよくなった俺は火のついた煙草を咥えてすっと吸い込み、 盛大に咽せた もう煙草なんて二度と吸わない 「はっはっは」 予想通り、と言わんばかりに笑っている秋さん 「笑わないでくださいよ」 と言いつつも 「笑うって」 まあ、笑ってるならいいかと思うのは惚れた弱みだろうか いつもの、螺旋のコーヒーを飲んで、暫くして、ベッドに寝転ぶ 電気を消して、その横で、秋さんが微笑む 薄暗い部屋で秋さんと二人、ベッドに並んで抱き合った なにがその切欠なのかと言われてもわからない ただ、流れのままにそうなった
可愛く跳ねる秋さんも 恥じらうように顔を背ける秋さんも 大胆になる秋さんも 全部この時ばかりのものだろう できればもっと長く、一生一緒にいたかったけど そうはならない 嬉しくて、悲しくて、泣きそうになるけど、涙が似合う場所じゃないから、ぐっと飲み込んで 頑張って、かっこつけて、情けない自分を捨てて、好きな人のために一生懸命であれた と思いたい そして俺と秋さんは、雛のようにくっつきあって、体温を身に感じながら眠りについた 深い深い眠りについた 最後の夜は、こうして終えた
開演 一組目、バンド初心者組 二組目、初心者を抜け出せない組 三組目、中級者になった組 この頃からライブハウスは雰囲気を変えて、そして四組目 ネクロスティックの順番だ バンドメンバーが出てきて、秋さんが出てくる 轟音が唸る 重低音が響く 会場が一気にお祭り騒ぎだ
「秋さん!」 叫んで、鉄柵を乗り越えようとする 秋さんが、俺を見る ゾッとするような無表情 能面みたいな、人形の顔 だけど、仮面が外れて、口元が緩んだ そして、仮面をつけて、イボに向く 振り上げられたナイフは容赦なくイボの・・・足に 足に、足に、足に、足に、何度も、何度も、刺して、刺すたび、イボが叫ぶ、悲鳴をあげる 壊れたように 刺し続ける 狂ったように 刺し続ける 「これもいらないな」 そして、秋さんはイボの股間をメッタ刺しにした
俺は茫然とその光景を眺めていた けど、イボの悲鳴が一層際立ったものだから我に返る 慌てて鉄柵を乗り越えて秋さんを止めようとする 止めなきゃ 止めなきゃ 「仕上げだ」 そして、秋さんはイボの口にナイフをいれて、躊躇せずに横に裂いた パックリと割れた口から放たれる人間とは思えない声に 誰もが息を呑んで動けないでいた 俺は秋さんを後ろから抱き上げて、引きずるようにその場を離れる どうしたらいいかわからないけど、一つだけわかるのは、逃げなくちゃならない でないと、秋さんが捕まってしまう
楽屋に連れて行った秋さんはぼうっとしていた 生気の抜けたような面持ちで俯いていた 「どうしてあんなこと!」 間髪いれずに秋さんは「ごめん」と謝った 謝ってほしいわけじゃないと言おうとした息を遮ったのは、予想外の言葉 「殺せなかった」 一瞬、思考が完全に止まった 言っている意味がよくわからなかった
「・・・叩かれ足りなかったってこと?」 「よく冗談言う気になりますね」 「まあ、こんな女だからね」 「そうですね」 「人刺しちゃったり、家飛び出したり、馬鹿な女だからさ。さっさと忘れたら?」 「そうですね、馬鹿ですね。ナイフの離し方、忘れました?」 秋さんは言われて気づいたようだった 離そうと何度も手を振るけど、ナイフは離れない 俺は秋さんの横に座って、そっとナイフを持つ手に添えた 一つずつ指を摘んで離して、両手が開く頃には 警察が楽屋に来ていた
警察の問いは前よりも激しかった なにせ今回は加害者の共謀者として見られている可能性があって それがなくても事情を知っているはずだと踏まれた だから、問い詰め方も怒号のようなものだった 「なにか知ってるんだろう!」 それに対して、俺は秋さんのなにかを知れていたかな、と考える 知れていたならいいな、と考える 「さあ?」 机を強く叩かれて、びくっとした 秋さんがなんて答えるか解らない以上、俺の口から言えるのは 「あのバンドのボーカル、相当あくどいことやってたみたいですよ」 そういう、秋さんにとって有利な言葉だけだ
流石に一日では帰してくれなかったけど、三日ぐらいで釈放された 釈放とはちょっと違うかな 母親は大泣きだった 父親も凄い怒ってた 警察が、どうやら巻き込まれたようなだけなので、というと 俺はあのライブハウスに出入り禁止、ということになった 結局、営業停止食らってたけどね 話はここでおしまい こっからは蛇足だけど、あとちょっと 聞いてくれる?
秋さんは二年程度で出てくるはずだった まだ未成年だから その時に調べたけど、特別少年院に入っても一年半から三年程度らしいね なかには成人して再逮捕、って人もいるらしいけど 俺は秋さんの居場所を知りたかった だけどご両親はいつまで経っても帰ってこなくて、結局帰ってきたのは十時過ぎだったか 「初めまして」 事情を話す前から敵意剥き出しの父親は俺を睨んできた 秋さんを苦しめた張本人だってのに 「秋さんの居場所を教えてください」 その途端に父親は激怒して、家の中に入っていった でも、俺は翌日も、翌日も、都合一週間諦めなかった
「少し痩せました?」 「馬鹿、太ったよ。健康的な生活送ってたからね」 「ピアス、やめちゃったんですね」 「暫くは通いの保護観がつくんだよ。素行がいいからって期間は短いけど」 「大変ですね」 「ケジメだから、別に・・・で、家上がる?」 「その前に一つだけ聞いておきたいんですけど」 「なに」 「彼氏できました?」 言うやいなや秋さんは俺の胸ぐらを掴んできて引き寄せる とても、とても怒ったように 「いると思ってんの?」 と こんなことでなんだけど、俺は、あー、秋さんだって 秋さん、昔のままだって 凄い嬉しくなってしまった
ん? で、今はどうなったの?
おつ 釣りだとしても面白かった
お疲れ様です! ごめんなさい、ちょっと思いの外長引いた 二時までには終わると思ったのに・・・ 気になっているらしい蛇の話をちょっと(どうしてこいつこんなかっこよさげな名前で呼ばれてんだイボでいいですイボで) 風の噂程度にしか聞いてませんが、バンドはまあ続けられなくなったそうです そして二年経って、もう一年経って俺は高3ですけど、襲撃もされてません ただ、それもあってこの先地元で暮らすつもりはないですけどね 本当にみなさん、お疲れ様でした
ええ話やー秋さんみたいな人に俺も出会いてぇな
けっきょく幼馴染みにはイボ襲撃から現在の秋さんとの関係まで全部話したの?
さて、まあ、それで、なんですけど 思ったより長引いて申し訳ないなーと本当に思ってます かなりの数の人が眠ったようですし、でも当初よりは注目されたからまあいいかな、とも思いますけど うん 釣りでした!!!!! ないよね!!! こんな話ないよね!!!
うむ! 乙!
次回作期待
ほんと長引きすぎたことだけに謝りたい 昨日やったらよかったな でも昨日思いつかなかったんです ヌクモリティに感謝感謝・・・ で、本題なんですけど この中に家出したらお姉さんに拾われたってスレ知ってる人います?
追いついたー さすがにフィクションだろうと思ってたけど面白かったよ!乙!
追い付いたら、終わってた 途中、あの話に似てるなーって思ってたら、同じひとか 乙でした 面白かったよ
買ってきたギターどうすりゃいいんだ・・・
乙、楽しく読ませて貰った 釣りって言うかフィクションって方がしっくりくるな
読みやすい文章で楽しかった!
ちょっとライブハウス行ってくるわ